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北海道博物館外観

見て、歩いて、学ぶ、湿地の素晴らしさ 北海道博物館 「もっと! あっちこっち湿地」 5月28日まで

2023/02/27 08:31
くらし ほっとひと息

225日から北海道博物館で始まった第20回企画テーマ展「もっと!あっちこっち湿地~自然と歴史をめぐる旅~」。湿地に棲む生きものたちや湿地開拓の歴史、人や文化とのかかわりなどに焦点を当てた展覧会です。

1800点の資料・標本が並ぶ他、足元のスイッチを踏むと生きものたちの声が聞こえたり映像が流れたりするなど接触リスクに配慮した「フットオン展示」を数カ所に設置。見て、歩いて、学べる、大人も子供も楽しめる内容となっています。528()までの開催で入場無料。

展示中の標本。左上から時計回りに鳥類、トキ、ダウリアチョウザメ

湿地とは、水を湛え水に覆われた土地のことで、湿原、沼、川、湖、干潟などさまざまな環境が含まれます。

独自の生態系を育み、水の循環を調整し、気象にも影響を与えているといわれます。渡りを行う水鳥にとっては旅の拠点として重要な役割をはたします。しかし、開発による破壊や気候変動により湿地は減少しています。そのため、湿地の生きもののなかには絶滅に瀕しているものや、すでに絶滅したものもいます。

かつて北海道の湿地に生息し今は絶滅した、チョウザメ、カワウソ、トキなどの貴重な標本は同展の見どころのひとつです。石狩川や天塩川に遡上していたチョウザメは昭和初期の記録を最後に姿を消しました。標本となっているダウリアチョウザメは、生息していたと推測されるものの証拠は残っていないそうです。カワウソは道内の川辺で普通に見られ、捕獲され毛皮にされていたといいます。1923年の新聞には「カワウソ毛皮格安」の広告が載っています。当時はさかんに売り買いされていたようです。国の特別天然記念物トキも、その昔北海道で見られた鳥。トキの標本は研究用に保存された物のため見た目がとても生々しく、奇妙な迫力があります。シマアオジは現在、道北で僅かに見られるのみとなった小鳥。ここで展示されるシマアオジの標本は、1887年に札幌で捕獲された個体で、たいへん貴重なものです。

生きものの標本展示は、植物、魚類、哺乳類、鳥類、昆虫類と数多く、とくに昆虫類の充実には目を見張ります。北海道ではあまり見られないタガメの標本も必見です。

石狩川流域に広がっていた広大な湿原は、明治以降の開拓によって99パーセント以上が失われたといいます。1891年に作成された石狩地方の地図には、湿地を示す記号が広く分布しています。当時の人たちは湿地を農地として利用するために、厚い泥炭を切り耕し、土を運んで開墾を進めました。(くわ)(すき)などの手農具、人と一緒に重労働に励んだ馬たちが履いた蹄鉄などの展示から当時の苦労がうかがえます。土壌改良のために馬やロープーウェイで土を運んでいたという映像も興味深い資料です。

左上から反時計回りに湿地マップとパネル、湿原開拓に使われた器具、舞鶴遊水地の解説とタンチョウのフットオン展示

最後の展示エリアでは、道内のラムサール条約登録湿地13か所をパネルで紹介しています。釧路湿原、ウトナイ湖など、各湿地の景観やそれぞれが持つ魅力を伝えています。設問に答えて自分にぴったりの湿地が見つかるというお楽しみ企画も用意されています。

湿地に近い地域で農業や漁業を営んだり、町をあげて生きものとの共存に取り組んだりする人々の暮らしにも触れています。宮島沼で活動するマガレンジャーや「人と生きものが集まり共に生きるまちづくり」を進める長沼町がその例です。

長沼町の舞鶴遊水地は、水害対策のために千歳川流域に造られた人口湿地のひとつ。かつて舞鶴地区には、その名の通り鶴が棲んでいたといいます。地元の農家の人たちが舞鶴に鶴を呼び戻そうと活動を開始したのが2014年。町に遊水地の整備を要望し、町は会議を重ねた末2016年に「タンチョウも住めるまちづくり」の推進を決定しました。遊水地を管理する国交省や地元企業も動き、遊水地は鳥たちが暮らすに適した環境へと変わっていきました。それに応えるかのように2019年にタンチョウが飛来し定着。2020年にはヒナが誕生し、以後3年連続の繁殖が確認されています。自然観察施設「鳥の駅マオイトー」を設置し、町内外の有志で「長沼タンチョウ見守り隊」を結成するなど、地元の人たちと湿地との関わりはこれからも続いていきます。

観光で訪れる機会も多い湿地。そこには生きものたちの営みがあり、人々の生活との密接な関係があります。この展覧会で、そんな湿地のいろいろな側面を知ることができるのではないでしょうか。

 

会場 北海道博物館 2階特別展示室

開催期間 2023年2月25()~5月28()

開場時間 9:3016:30(2~4月) 9:3017:00(5月)

休館日 毎週月曜日

入場料 無料 (総合展示室への入場は有料)

所在地 札幌市厚別区厚別町小野幌53-2

電話 011-898-0466(総合案内)

URL  https://www.hm.pref.hokkaido.lg.jp/